耳鳴り

高卒ルーキーが四番バッターを打ち取って
ドームが歓喜に沸く瞬間に僕は
この人生が自分には向いていないと
グラブに収まる白球を見据えながらつぶやく

もしも神様が公平なら
どこかを間違えて
僕をこの世に送り出したのだろう

時間は妄想を始めている
かなわぬ思いをすりつぶしていく
空間は振動を食い止めている
僕の耳にはどの音も届かない

 

血統のない牝馬がダービーを駆け抜けて
馬券が大量に宙を舞う瞬間に君は
この世界に確かに光はあると
最下位の馬の到着を見もせずに熱狂する

もしも神様が公平なら
僕のどこかにも
光る才能を与えているのだろう

時間は妄想を食い止めている
確かな感触を振りまき続けている
空間は振動を始めている
衝撃的な耳鳴りが鳴り響く


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