腹式呼吸という「型」は必要なのか?ボイトレに関する諸説を噛み砕いてみる


こんにちは。ボイストレーナーのでんすけ(@densuke_snail)です。

今回は、「腹式呼吸」をテーマに。
腹式呼吸って必要なの!?ということを書いてみたいと思います。

え、必要じゃないの?



そもそも、腹式呼吸とは

腹式呼吸、ボイトレに関心のある方はご存知の言葉かもしれませんね。
たいていのボイトレ教室では、まず基本として腹式呼吸を教えるところが多いのではないでしょうか。

腹式呼吸とは、簡単に言うと、
お腹を使った呼吸、です。

くわしく解説した記事もありますので、
こちらも参考にどうぞ。

3.歌の基本は呼吸から

4.歌の基本!腹式呼吸をマスターしよう

先ほども書きましたが、
これが歌を歌う際の基本、とされることが多いです。
オペラ、声楽の分野で昔からそう教えられてきた経緯があったから、という理由が大きいと思いますが。

かくいう僕も、基本的には腹式呼吸ありき、という考え方です。

ですが、一方。
腹式呼吸はいらない。
むしろ、良くない!
という説もあるのが実状。

人によって言ってること違うけど、なんで?

腹式呼吸不要論

腹式呼吸がいらない!という論には、
だいたい以下のようなものがあると僕は認識してます。

  • 実際の歌手は腹式呼吸なんて意識してない
  • 昔ながらの声楽の教え方で、ポップスの歌い方とは違うものでしょ
  • 腹式呼吸さえできれば何でもできるって言いすぎ
  • 腹式呼吸だと意外と力が入ってしまって歌いにくい

他にもいろいろあるかもしれませんが、
とりあえず僕が目にしたご意見をまとめるとこんな感じかと。

それぞれの議論について、
僕なりの見解を書いてみようかと思います。

歌手は腹式呼吸を意識してない?

「実際の歌手は、歌ってるときに腹式呼吸を意識してない」
という意見。
実際にプロの歌手を教えてらっしゃる方のご意見として目にしたんですが。

僕の感想としては、
いや、知らんがな(´・ω・`)
です。

これは若干議論になっていなくって、
その歌手が腹式呼吸を意識しているかどうかはどうでもいい話で。
大事なのは、実際に腹式呼吸をしているのかどうか、です。

歌がうまい人が「そんなの意識してないよー」と言っていたからといって、
「あ、意識しなくても上手くなるんだ!」というのは拙速です。

当の本人が意識していないとしても、
元々腹式呼吸を意識してたけど、今では無意識でできるようになった、のか。
あるいは最初から無意識でできていた、のか。
あるいは、ほんとに腹式呼吸なんかしてなくて不要なのか。
どれかは判断できません。

なので、「歌手が歌ってるときに腹式呼吸を意識してない」という事実からは、
腹式呼吸が必要か不要か、なんてそもそも判断できません。

声楽の教え方でポップスを教えても違うものでしょ

腹式呼吸が大事、という教え方は、
確かに昔からある教え方で、声楽、オペラの世界で使われていた教え方のようです。
その教え方が、そのまま現代的な歌を歌うときにも適用されている、と。

ただ、この意見も若干筋違いだと思っていて、
声楽とポップスは歌い方が違うのは確かですが、
「息を吸って、吐く時に声を出す」という基本は一緒です。
そこに腹式呼吸が関わっていないと断定する根拠が必要です。

ジャンルが違って歌い方が変わるから、
教え方も、呼吸のやり方も、根本的にガラッと変えないといけない、
とは言い切れないのでは?

少なくとも、これまでの歴史の中で、
声楽の教え方で「うまく歌を歌う」という目的は達成してきたわけで、
それを取り入れてポップスに応用する、
という考え方があってもいいと思うのですが。

腹式呼吸さえできれば何でもできるって言いすぎ

とにかく腹式呼吸さえできれば、
あとはどんな声でも出せる!というのは、
確かにボイストレーニングの現場でよく聞く説です。

これに関しては僕も同意見で、
腹式呼吸ができたから、例えば高い声が出せるようになるかというと、
そういうわけではないです。

まったくの無関係とは言いませんが、
高い声が出ない!といって腹式呼吸の練習をしても
必ず高音が出るようになる、というわけではないです。

腹式呼吸は、あくまで
整った呼吸をするための手段だと考えるべきです。
なので、腹式呼吸ですべてが解決するわけではないです。

ただ、逆に言うと、「だから腹式呼吸はいらない」ということにはなりません。
整った呼吸は基礎として必要です。
高い声を出すために直接作用するわけではありませんが、
声を出すための動作として、呼吸が必要なことに変わりはありませんからね。

腹式呼吸だと意外と力が入ってしまって歌いにくい

さて、ここが問題です。

腹式呼吸で歌うと良いらしいけど、
意外と力が入ってしまって歌いにくいんだよね、
という話。

楽に歌が歌えるようになる、
というのが腹式呼吸の良いところのはずなんですが、
それが裏目に出てしまっているのであれば、
腹式呼吸でやらない方がいいんじゃないの?となりますね。

実際のところ、改めて腹式呼吸を意識しながら歌を歌ってみると、
お腹に意識が行き過ぎる感じになってしまう人もいらっしゃるかと。

腹式呼吸はお腹に力をいれるんだよ、とか
歌うときも腹式を意識しながら!とか
さらには先ほどの、腹式さえやってれば全部できる!という話もあいまって、
とかく腹式呼吸を意識させられることがあると思いますが。

この意識しすぎるところが問題ではないかと。

先ほども書きましたが、
「整った呼吸をするための手段」として腹式呼吸が必要なわけです。
それを、意識を腹式呼吸に置きすぎるあまり、
逆に不自然な呼吸になって、結果、歌いづらい。

おや?
腹式呼吸って不自然な呼吸なのか?

フースラーが語る呼吸

歌を歌うために、「整った呼吸をする」ことが重要だ、というのは、
フレデリック=フースラーという人の本にも書かれています。
こちら。

ボイトレの歴史を語る上で欠かせないと言われる本ですが。

ただし、この本では「腹式呼吸がいいよ」という書き方はされていません。
逆に、型や方式に分類された呼吸法は不自然な呼吸法で良くないよ、
という書き方もされています。

でんすけの腹式呼吸への見解

総合して考えると、
最終的に「整った呼吸」「自然な呼吸」をしつつ
歌を歌うのが一番いいのだ、ということだと考えられます。

腹式呼吸を肯定する派も、否定する派も、
おそらくそこは共通の認識でいいんだと思います。

ただそれが、腹式呼吸という「型」になってしまうと
議論が分かれてくることになる。
その「型」では自然な呼吸ができないのではないか。
いやいや、この「型」なら自然だ、など。

呼吸のしくみ、というのは、
生理学的、解剖学的には明らかにされています。
横隔膜が動くことで肺の容量が増減して、そこに空気が出入りする。
簡単に書くとそんな感じ。

その仕組みこそが一番自然な呼吸だ、と仮定して。
それを実際に体でやってみようとすると、どうなるのか。
これは感覚的な話になって、非常に難しいです。
人間は、すべての筋肉を意識して動かせるわけでもないですから。

なので、ある程度きまった「型」があった方が「便利」です。
教える方も、教えられる方も。

まずは「型」に従ってやってみる。
最初は慣れないために、不自然になりやすいかもしれません。
これはもう、慣れの問題なんだと思います。

慣れてくれば、自然に呼吸することができるようになると思います。
そこから、さらに自由に呼吸できるように、
あるいは深く呼吸ができるように、自分で微調整してみる、
というのが、一番近道になるのではないか、と僕は思います。

その「型」が腹式呼吸であろうが、なに呼吸であろうが、
何かしらの目的をもって「型」とされているはずなので、
なにかの効果は出してくれるはずなのです。

最終的には、「整った呼吸」「自然な呼吸」ができるように
「型」をヒントにして試行錯誤するしかないのかな、と思います。

で、僕はその「型」として、「腹式呼吸」という型を使います。
ということです。

まとめ

ということで、腹式呼吸は必要か不要か、という話でした。

結局のところ、ボイストレーニングというものにおいて、
ばっちりハマるたった一つの回答、というものは存在していません。
それが、教える側も教えられる側も「難しい」と感じるゆえんです。

なんですが、ひとつの「ヒント」として
腹式呼吸という呼吸がよさそうだぞ、と知ってもらって、
自然な呼吸を体得してもらうのが良いのかと思います。

それではまたー。


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