オフィス

その部屋には、本音が鬱屈していた。
住人はみな一様に、歪んだ表情を浮かべた。
浮ついた笑顔が、タバコの煙と共に漂っていた。

鳥小屋の喧騒のような話し合いの末、
何一つとして固まらない結論。
そして僕たちは
動くことをやめた。

そうだ、雰囲気になればいい。
僕らはそう思った。
カーテンの色に溶け込み、
湯沸かし器の音に紛れ、
床よりも高く、天井より低い。
僕たちは雰囲気になろうと思った。

しばらくしてから、はたと気づいた。
雰囲気は、ものを思わない。
思っている間は、なりきれていないのではないか。

カーテン、ゆわかしき、ユカ、てんじょ
僕たちは思うことすらやめて、
雰囲気になろうとすら思わなくなった。

雰囲気ですらない僕たちは、なんだろう。
得体の知れない幽霊だろうか。
悟りを開いた仙人か。物も言わず働くゾンビか。
いずれにせよ、この世には存在していない。

そんな僕たちは、自由だ。果てしなく、自由だ。
だけど僕たちは、この世には存在していない。

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