36.ボーカリストが理解しておくべき周波数帯のイコライジングの話
ミキサーや、マイクなどの解説で出てきましたが、
周波数の話をしておきます。
これを知らなくても、別に歌は歌えるんですけどね。
ただ、やはりマイクを使い、電気を使って音を増幅させる、ということをする以上は、
避けては通れない話ではないかと思います。
たとえ生声で歌うとしても、どの周波数成分が多かったらどんな感じか?
ということを知っておくと、出したい声、音質を考えるヒントになるかと。
36.1.そもそも、周波数ってなによ
周波数とは。
ある振動(ここでは音、ですので、空気の振動ですね)が、1秒間のうちどれだけ振動するか、
という値のことを周波数と呼びます。
単位はHz(ヘルツ)です。
100Hzだと、1秒間に100回振動している、ということです。
で。
周波数が高いと、高い音程に聞こえます。
周波数が低いと、低い音程に聞こえます。
例えば、440Hzの振動と、220Hzの振動を聴き比べてみるとこんな感じです。
最初が440Hz、後半が220Hzの振動の音です。
36.2.音は周波数の集合体?
さて。
先ほどの音、440Hzと220Hzと言い切りましたが、実際には440Hz、220Hzの振動だけではありません。
もう少し違う周波数の振動がまざって先ほどの音になっています。
(439Hzとか、441Hzとか)
純粋に440Hzの振動だけの音、というのは、自然界にはほぼ存在しない、理想的な音と思ってもらっていいと思います。
ちなみに、440Hzの振動で聞こえるのは「ラ」の音程です。基準として決まっています。
とはいえ、同じ「ラ」でも、
例えば、ピアノ、ギター、声、管楽器など、鳴らす楽器によって音色が違いますよね。
同じ「ラ」なのに。
これは、440Hz以外の周波数の振動が、どれだけ含まれているか、によって聞こえ方が違っているのです。
ちょっと、この図を見てください。
僕の声が、だいたい「ラ」を出した時のスペクトラムアナライザーの画面です。
え、す、スペクt・・・?
スペクトラムアナライザーです。
通称スペアナともいいます。
鳴っている音を解析して、どの周波数の振動が、どれだけ含まれているか、を表示してくれるものです。
ちなみに画像で使っているのは、StudioOneというソフトに付属しているスペアナです。
さて、図の横軸に周波数が書いてあり、縦軸にdB(音量)が描かれています。
周波数の値が少し小さくて見えにくいかもしれませんが。。
200Hzぐらいと、400Hz、500Hz、600Hzあたりが成分量が多そうですかね。
いずれにしても、おおむねすべての周波数の振動が含まれている、ということです。
あとは、どの周波数が多めに含まれているかによって、聞こえる音が違う、のです。
36.3.HiとかLowとかMiddleとか
ミキサーを取り上げた回でも同じタイトルを使いましたが。。
先ほどの話を踏まえまして。
DAWソフトや、ライブのPAさんが使うミキサーなどでは特に、
Hi、Middle、Lowというパラメータ、というか、周波数の呼び方があります。
Hi:だいたい10kHz以上
Middle:だいたい200Hz~10kHz周辺の音
Low:だいたい200Hz以下の音
という意味で使います。
この「だいたい」というのは、本当にだいたいです。
むしろ、具体的にこの値、と決まっているわけではないです。
もう少し言い方を変えると、こんな感じになります。
Hi:キンキン響く音の周波数
Middle:人間の声に多めに含まれる周波数
Low:低音、ドスドス響く音の周波数
すごく乱暴にまとめるとそんな感じ。
36.4.イコライザーって何?
さて、今回の記事のタイトルにもあった「イコライジング」の話。、
音に含まれる周波数の成分を、増やしたり、減らしたりしてくれるツールをイコライザーといいます。
英語なので、省略してEQと言ったりします。
そして、EQで周波数成分を調整することを、イコライジングと言います。
DAWで作る音楽や、ライブなどでマイクを使って歌った場合、ほぼ必ずこのイコライザーで音色を調整されます。
理由は様々ですが、
マイクの性能、周波数特性に応じて調整した方が良い場合もありますし、
声質として、音楽の方向性と違う場合もありますし、
単純にどこかの周波数成分が多すぎてうるさい声になっている場合もあります。
で、この時に、先ほど出てきたHi、Middle、Lowなどの言葉を使います。
低音がモコモコしているからLowをカットしよう、とか。
他の楽器に埋もれるからMiddleをブーストしよう、とか。
キンキンして少しうるさいからHiをカットしよう、とか。
いずれにせよ、欲しい音質に近づけるために周波数成分を調整するのです。
36.5.実際に周波数の成分を変えるとどうなるの?
さて。
以前公開してた、僕の歌ってみた動画の音源を使って、
実際、周波数を増減させるとどのようになるのか、というのを聞き比べてみたいと思います。
DAWソフト「StudioOne」に付属しているEQを使って、
ボーカルの声だけに対して、Hi、Middle、Lowをそれぞれブースト or カットしてみました。
まとめた動画がこちら。
できればヘッドホンなどで聞くとわかりやすいかも。
0:10ぐらいからが、録音したそのまま。
1:00ぐらいから、Hiをブーストした音です。
だいたい10kHz以上の周波数帯をブーストしています。
Hiのブーストは少しわかりづらいかもですが。。
すこーしだけ明るく、あるいは硬く響くようにキンキンとした音が増えているように聞こえませんか?
特にロングトーンを伸ばしたところ
「新しい靴を履いた日はーー」と、「あてもなく隣の町までーー」
の伸ばしたところはわかりやすいかも。
1:50ぐらいから、Hiをカットしてます。
同じくわかりにくいですが、すこーしだけ硬い響きがなくなった感じ。
カットしてある方がすっきりして聞きやすいかも。
2:40ぐらいからはMiddleをブースト。
800Hz周辺の周波数帯をブーストしています。
ボーカルが少し前に出てきたような、単純に言うと音量が大きくなったような。
人間の声は、このあたりの周波数の成分を多く含んでいます。
ですので、ブーストするとボーカルの声が聞こえやすくなります。
3:30ぐらいからMiddleをカット。
ボーカルが少し後ろに行ったような感じですね。
こもってるというか、芯がなくなった感じになります。
4:25ぐらいからはLowをブースト。
だいたい200Hz以下の周波数帯をブーストしています。
これはわかりやすいと思いますが、少し温かみが出てきた半面、
こもったような声になっている印象になります。
5:15ぐらいからLowをカット。
軽い声になりました。カリカリした音というか。
電話とかの無線通信機器からの声みたいになりますね。
まとめ
ということで、周波数の話と、実際にイコライジングしてみるとどうなるのか、という実例を出して説明してみました。
今回はざっくりとHi、Middle、Lowと3つに分けてやっていますが、
実際にはもっと細かく、どのあたりをブースト、カットするといいか、
というのを調整したりします。
だいたいどの辺の周波数をいじると、どんな音質になるのか、
というのを少しでも実感していただければと思います。
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