学校では教えてくれない?作詞テクニックとしての倒置法の魅力
こんにちは。ボイストレーナーのでんすけ(@densuke_snail)です。
さか立ちしながらお送りしております(嘘
今回は「倒置法」について。
小学校の詩の授業で習ったと思います。「倒置法」。
要するに、もともとの文章の順番をわざと逆にする、ということですね。
逆にするんですよー、ということは教えてもらえるんですが、
逆にしたから、なんなの?ということって、あんまり詳しく説明してもらえないような気がしています。
今回はそんなお話。
さっそく倒置してみよう
さっそくですが、倒置してみましょう。
たとえば、こんな文章があるとしましょうよ。
「君は僕とキスをする」
はい。キスしました。唐突ですね。
これを、倒置法で書いてみると。
「君はキスをする。僕と。」
はい。キスしました。二回目ですね。
倒置してみると、どうでしょうか。
「僕と」キスをする、というのが強調されている気がしませんか?
文を読んでいくと、まず目に入るのが「君はキスをする」です。
このとき通常であれば、読み手側は「いやいや誰とだよ」と思うはずです。
キスをする対象が書いてありませんからね。
「君」がキスをするのは、家族の誰か、お母さんかもしれないし、
ペットの犬かもしれない。猫かもしれない。
酔っぱらってキス魔になって知らない人にキスするかも?
でも、普通は恋人とするはずだ。
恋人と言えば、え、ま、まさか、、まさか!!
「僕」だーーー!!
という実況が入ってから「僕と。」という文字が目に入ることでしょう。
人間というのは、ある程度予測をしながら文章を読んでいるものです。
そこで、思っていた通りに言葉が並んでいないとしたら?
「君は」と「キスをする」の間に、キスをする対象が書かれていないとすれば?
「普通は書いてあるでしょ、誰とキスしたかって。なんで書いてないの!?」
と予測を裏切られることになり、いらぬ妄想を始めます。
それが先ほどの謎の実況。
色んな想像が膨らんだ結果、なんと結果は「僕と」だったわけです!!
・・・よく考えたら意外でもないんでもない結末なんだけど、それを「まさか」と思わせる手法。
それが「倒置法」です。
倒置法が作るドラマ
倒置法をさらにダイナミックに使っていくと、
よりドラマチックな表現ができます。
たとえば。
~~~~~~~~~~
まさか、あんなことが起こるなんて
僕は我が目を疑いたかった
世界が終わってしまった
あの夜の一瞬で
あの日、君はキスをしたんだ。アイツと。
~~~~~~~~~~
はい。またキスしました。三回目ですね。
「君はキスをしたんだ。アイツと。」の部分で倒置法が使われていますね。
まさか、「僕」じゃなくて「アイツ」だったのか!という意外感。
でもそれだけではないんです。
もう少し大掛かりな倒置を使っています。
先ほどの文章を、「通常の」書き方にしてみるとこんな感じです。
~~~~~~~~~~
あの日、君はアイツとキスをしたんだ。
まさか、あんなことが起こるなんて。
僕は我が目を疑いたかった。
あの夜の一瞬で、
世界が終わってしまった
~~~~~~~~~~
はい。どうでしょう。
普通に書けば、まず最初に何が起こったかを説明します。
「君がアイツとキスをした」んだよ、と。
で、だから「世界が終わったよ・・・」と感想を述べる。
これが人に説明する場合の順序ってもんです。
ところが、それを倒置されてしまうと、どうでしょう。
そもそも「まさか、あんなことが起こるなんて」と始まった時点で、おや?と思いませんか?
だって、「あんなこと」ってなんやねん。
何も聞かされていないのに、まさか、と言われても、何が起こったかわからない。
想像するしかない。これはもう、想像するしかないんやで!
学校の試験で0点を取ってしまったのか。
近所のヤンキーに絡まれてお金を取られてしまったのか。
痴漢と間違われて電車を下ろされたか。
どっきりを仕掛けられて落とし穴に落ちたか?
色んな想像をしながら、「世界が終わった・・・」などという文章を読んでいきます。
世界が終わるほどの衝撃!
ますます何が起こったか気になりますね。
そして最後に、
「君はキスをしたんだ。アイツと」!!!
そ、そんなことがっっ!!!っぇ!!!
おそらく、「君」は彼女か何かで、「アイツ」は恋敵なのか、友人なのか。
僕が恋人だと思っていたのに!君は!アイツと!
・・・倒置法を使うと、こんなにテンションが上がる、ということです。
あーしんど。
倒置するだけで前フリができる
ここまで読んで頂ければわかると思いますが。
要するに倒置法を使うと、壮大な前フリができるということです。
「あんなことが起こったんだ!」とだけ伝えれば、
相手としては「何が?何が起こったの?ねぇ!?」となります。
これでツカミはばっちりです。CMだってまたげる。
で最後のオチ「君はキスをしたんだ。アイツと」です。
謎が解明されたすっきり感と相まって、「まじか!」感が演出できる。
倒置法の威力、ご理解いただけたでしょうか。
まとめ
ということで、倒置法の話でした。
一文の中で倒置する小さいものから、
文章の構成をひっくり返す大掛かりなものまで、
ひっくりかえすことで、前フリをすることができます。
前フリしておいた上でオチを続けると、
読み手側に深い印象を与えられます。
あんまりやりすぎるとややこしくなるので、
ここぞという所で使うのがいいとは思いますが、
ある意味「ひっくり返すだけ」なので、手軽に使ってみてわかりにくければ元に戻す、という感じで使ってみるといいと思います。
それではまたー。
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— でんすけᔦꙬᔨボイストレーナー (@densuke_snail) March 9, 2018
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