高音を出すために!地声で頑張るか、裏声で逃げるか、天月さんの歌を例にして練習方法を考える
こんにちは。ボイストレーナーのでんすけです。
今回は、高音の発声についてです。
高音に関することはこれまでもいくつか書いたつもりなのですが、今回は別のアプローチで書いてみようと思います。
いかに逃げるか、という視点も含めて、高音をどう処理するか、という話。
高い声にも種類がある!どういう高音を出したいのか
さて、まず考えるべきは、
そもそもどういう高音を出したいのかということ。
具体的にいうと、地声なのか、裏声なのか、ということになるんですが。
たとえば。
最近の歌い手さんの曲を例に出してみます。
天月「きみだけは。」
この曲で、いろんな「高音」が出てくるので確認してみましょう。
この0:42あたりからのフレーズ
「だから僕らは手を取って」あたり。
これは裏声ですね。
音の高さとしてはmid2Fなので、男性としてはそれほど高くはないのですが、
歌の表現としてわざと裏声で歌っているパターンです。
しっかり出している裏声、というよりは、柔らかく細い裏声、という感じですね。
(mid2Fなどの音名がわからない方はこちらをどうぞ)
もう少し進んで、1:12あたりからのサビ前のフレーズ
「理由のない運命に巻き込まれ 君は」あたり。
これは地声ですね。
最後の「は」はhiAに上がります。
先ほどの裏声よりも音程としては高いですが、地声でしっかり歌われています。
さらに進んで、サビの1:34あたり
「誰かに笑われるような はかない夢だとしても」
しっかりした裏声に近い、人によってはミックスボイスと呼ばれる声です。
hiCまで上がるので、通常の男性はそう簡単に出せません。
こんな感じで、一言で高音といっても、
・やわらかい裏声
・しっかりした裏声(≒ミックスボイス)
・地声でしっかり
というように、いろんな種類があることがわかります。
音楽的に、実力的に、高音を選ぶ
さて、「高音」の種類を見てみましたが、
実際にあなたが歌う時、どの声を選びますか?
基本的には、本人の歌い方に合わせた歌い方がベターです。
が、場合によっては、
「音楽的には、裏声の方がいいんじゃない?」とか、
「いや、地声の方がしっかりして良い」とか、
本人の歌い方をアレンジしたくなることもあるかもしれません。
また、自分の実力を鑑みて
「ここは出せないから、裏声にしようかな・・・」
「ここは出せるから、地声にしてやれ!」
というような場合もあるかもしれません。
いずれを選択したにせよ、それが間違い、というわけではありません。
やってみて「聞き心地が悪くなった」という場合はあるかもしれませんが、
それは実際にやってみて、精度を上げてみてから判断できることかと。
まずは、音楽的に、実力的に、
「自分にできる、音楽的にイイ感じの声」を選ぶところから始めてみてください。
高音が出せないときは、出さない選択も
いや、地声で高い音が出ないし、裏声も苦手だし、どうしたらええねん。
という場合は、いっそ高音を出さないという選択肢もあります。
まぁ、地道に練習すれば出せるようになる可能性はあるので、その可能性を消すわけではないです。
ないんですが、今すぐに歌いたい、というのであれば、いまは戦略的撤退。
たとえば、
・キーを落とす
・かすれた声で歌っちゃう
・メロディをアレンジしちゃう
など。
このあたり、ズルい!と思っちゃう人も多いですが、
別にズルくないです。
むりやり歌って、変にひっくり返った声で、おかしな声を聞かされるよりは、
自分の出せる範囲の声で安定して歌ってもらった方が、
聞いている側としては心地いいわけです。
決めてから高音を出すメリット
どの声を出す、と決めたら、
そこから高音を出す練習です。
なぜ、先に決める必要があるのか、というと。
いざ実際に歌う時に、裏声か地声か迷って、声が裏返ってしまうからです。
高音が揺れてしまう原因と対策。
いわゆる「声区融合」と呼ばれる理論をちょっとかみ砕いてデフォルメした絵です。全ての人に当てはまる原因、対策ではないかもしれませんが、練習の参考に。#ボイトレ #カラオケより具体的な練習方法などはこちら。https://t.co/Ln7v2luT5v pic.twitter.com/Qa8lv1VWj8
— でんすけᔦꙬᔨボイストレーナー (@densuke_snail) February 20, 2018
地声なら地声で、裏声なら裏声で、出そう!と思って歌わないと、
うまく制御できなくなって、バランスを崩してしまいます。
僕は、怖気づいてしまうという言い方をするんですが、
できるかできないかギリギリのことって、思い切ってやらないと、下手に怖気づいてしまって結局失敗するんです。
そうならないためにも、まずは、自分がどんな声を出すのか、というのを
事前に決めてから臨む必要があるわけです。
思い切って飛べ!
高音を出す練習方法
具体的に高音をどうやって出すのか、という話は、
過去に書いたこちらの記事などを参考にしていただきつつ。
また、こちらの記事の練習方法は、ミックスボイスと呼ばれる声の出し方にもつながる練習です。
さらに、ここではもう2つほど、別の切り口での練習方法をご紹介します。
細切れにして練習する
先ほどの「きみだけは。」を例にとると。
0:42あたりからのフレーズ
「だから僕らは手を取って」
この一か所だけ裏声になるような例でいうと。
「取って」のところだけ切り出して練習するというのが有効です。
原曲を歌いながら練習してしまうと、
「だから僕らは手を取って 痛みと苦しみを割って」
と、どんどん次のフレーズが流れていきます。
もし、「取って」の裏声が上手く出せないとしたら、
うまく出せない!やばい!
と思ったまま次の「痛みと苦しみ~」に続いて行ってしまいます。
なんでできなかったのか、
どうバランスを取って、
どう力の入れ具合を変えればできるのか、
反省するヒマもないまま、次のフレーズにいってしまうわけです。
これだと意味がない。
なので、「取って」だけを取り出して、歌う。
テンポを落としてゆっくりでもいいです。ていねいに。
ロングトーンに注意する
高音でより難しいパターンというのが、このロングトーンです。
これは、1:12あたりからのサビ前のフレーズ
「理由のない運命に巻き込まれ 君は」
のところ。
特に「君は」は音程も高いのでより難しい。
これも、先ほどと同じように「細切れに」練習するのが良いと思いますが、
ポイントは安定して伸ばせるようにするというところです。
高音なので、少し我慢しながら声を出すことになるわけですが、
出だしで「出せた!」と思っても、
声を伸ばしている間に不安定になるというのはよくあること。
ロングトーンのときは、いつもよりほんの少しだけ強めに「支え」を意識するべし。
細切れにして、ゆっくり始めて、本来の長さよりも長めに伸ばす、
という形で練習しておくのが良いかと思います。
まとめ
ということで、高音を出すための練習、あるいは逃げ方の話でした。
まずは、どんな声を出したいかをちゃんと決める。
場合によっては、キーを下げる、アレンジして逃げちゃうのもアリ。
地道に発声練習をするのも大事なんだけど、
それとは別に、歌を細切れにして、ちょっとずつ出してみる。
徐々に原曲に合わせて歌うようにする、というアプローチもアリ。
ただやみくもに「高い声が出したい!!」と言っても、
出ないモノは出ないし、難しいことだからこそ工夫をしましょうよ、ということです。
練習を続ければ、出せるようになるはず。
焦らず、今できることをやりましょう。
それではまたー。
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