クリープハイプ尾崎世界観さんの歌い方、歌唱力を解説


こんにちは。ボイストレーナーのでんすけ(@densuke_snail)です。

今回は、コメントでリクエストを頂きました、
クリープハイプのボーカル、尾崎世界観さんの歌声解説を書いてみます。

僕、長らく「クリープパイプ」だと思ってました。
「パイプ」。半濁点ついてると思ってた。
正しくは「ハイプ」です。

尾崎世界観、って、すごい名前ですね。
当然本名ではないようですが。
なんか、名前負けしそうで、そんな名前つけれないわ。

Wikipediaいわく、
「世界観がいいね」という言葉に違和感を持ったために
尾崎世界観という名前を名乗るようになった、のだとか。

そんなクリープハイプ尾崎世界観さんの歌声解説。



イト

では聞いてみましょう。
クリープハイプ「イト」

 

映画「帝一の国」の主題歌にもなってるみたいですね。

クリープハイプ尾崎世界観さんの歌唱力1 ハイトーンボイス

尾崎世界観さんの歌を表現するときに
よく使われる言葉が「ハイトーンボイス」ではないかと。

実際、高いんです。
0:50あたりからのフレーズ
「こ『の』た『び』は『ど』うも」
この二重カッコ『』の部分がhiBです。
(hiBなどの音名の説明はこちらをどうぞ)

さらに1:19からのサビのフレーズ
「『い』つかこの糸が千切れるまで」
この『い』がhiC#です。
高い。

カラオケなんかで歌おうとすると、かなりしんどい音域です。

いわゆる「ボイストレーニング」では、
あまり良しとされない声だろうと思いますが。
かなりのどを締めるような、声をつぶすような感じで
無理やり高音を捻り出している、という感じを受けます。

一般的に、高音を出そうとすると、のどぼとけが上に上がってくる
いわゆる「ハイラリンクス」という現象が起こりやすくなります。
このハイラリンクス、できるだけ起こらないように声を出しましょう、
というのがボイトレ界隈ではよく言われたりしますが。

その定石を無視して出しているのがこの声になります。

僕もハイラリンクスをなるべく直そうね、
という記事を書いていたりしますが。

67.高音がうるさくなるあなたへ!ハイラリンクスにならずに歌う方法

ハイラリンクスになると、どうしても無理して声を出す必要がでてくるため、
必要以上に声がうるさくなって聞き苦しくなります。

尾崎世界観さんの場合、うるさくなりすぎない加減で止めている。
ハイラリンクスならではのつぶれたような声を
うまく個性として使いながら声を出している感じがします。

慣れてない人がやると、結構しんどい声ですが。
うまく制御しながら出すと、クリープハイプっぽくなります。
あまり他の人がやってない=強烈に個性的
ということで、好みの別れる声とも言えると思いますが。

クリープハイプ尾崎世界観さんの歌唱力2 微妙な音ズレ

もうひとつ特徴的なのは、微妙に音がずれている、というところ。

0:36からの出だしのフレーズ
「こ『の』た『び』は『ど』うも」
この二重カッコ『』の付いたところ、
かなりゆったりとしゃくり上げてますね。

先ほどのハイラリンクスの件も関連するのですが、
ハイラリンクスになる=のどが締まりやすい
ということで、音程を合わすのにちょっとパワーが必要になります。
音程を合わすのに無理やり感が出るというか。

この
「こ『の』た『び』は『ど』うも」
のようなフレーズが何度か繰り返されますが、
そのたびごとに、無理やり音程を合わせにいっている感じ。
それによって、最高音に到達したときに、微妙に音がズレています。

ここが不思議なもので、
本来であれば、「音ずれてるよ!直しなよ!」となるのですが。
この微妙なズレが、なにか味になっている感じがします。

おそらく、もっとあからさま外れていたら「直しなよ!」となるのでしょうが、
このぐらいのズレ感だと、
「なんか必死で訴えてきてる感じがあって、いいね」
となるようで。

もしかしたら、意図的にズラしているのかもしれません。
ズレ感がいい効果を生む、と知っててやっているようにも思えます。

なぜそう思うのかというと、もうひとつ例があって。
1:30あたりのサビの終わりのフレーズ
「何度でも探『せ』」
ここも、明らかにずれています。

これは明らかに意図的ですが、
わざと変な音程を出して印象を強くしています。

この「音をズラす」というのを効果的に使って
印象的な歌い方に仕上げている、というのが
尾崎世界観さんの特徴かと思います。

クリープハイプ尾崎世界観さんの歌声を例えると

尾崎世界観さんの歌声を何かに例えてみようのコーナーです。

「のこぎり」。

横山ホットブラザーズの
「おーまーえーはーあーほーかー」
のフレーズでおなじみですね!

個性的な声であること、
ハイトーンも出せること、
ちょっとしたズレ感がいい感じに響くこと。

この辺、横山ホットブラザーズさんののこぎりに通じるものがある気がする。
・・・僕だけですか?

まとめ

ということで、クリープハイプ尾崎世界観さんの歌声解説でした。

高音、独自の出し方で一見無理やり出しているように聞こえますが、
それをうまく個性として生かして、
独特な歌い方を作り上げているようです。

ボイストレーニングって、
教科書的な歌い方じゃない人は矯正するように教えるもんですが、
その枠に収まらない人もいるということで。
つくづく、音楽は自由だなと思ったりします。

尾崎世界観さんの世界観にあこがれる方は
マネしてみてもいいんじゃないでしょうか。
ちょっとしんどそうですけど。

でも、無理やりやりすぎてのどを傷める、とか
力み過ぎて金切声みたいに聞き苦しくなる、とか、
それはやめた方がいいですよ。いくら自由だと言っても。
そこら辺、バランスとっていくのが歌の難しいところかと思います。

それではまたー。

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One thought on “クリープハイプ尾崎世界観さんの歌い方、歌唱力を解説”

  1. とり says:

    遅くなりましたが、4人もの解説をありがとうございいました。
    とても読み応えがあり、おもしろかったです。

    この間テレビで千秋がポケビ時代の歌を歌っていて、
    ツイッターを見ていたら上手いという人と下手という人が本当に半分半分くらいで、
    これはプロの目から見るとどっちなんだろう…?と面白かったので、
    機会があればまた解説をお願いしたいです。

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